先日のファニコネ展、11日の閉場後に、テクノエイドスペース/森下代表を講師に、
関係者によるかなりマニアックな、「ura 座るセミナー」を開催しました。
参照)以前開催の
「木の仕事の会/座るセミナー」本来は主催者として、総括を先にすべきかも知れませんが、
出展者でもあることを考えると、ある程度時間を置いた方が、
客観的に見えてくることもあるでしょう。
ですので複眼的に、少しその方向から考えてみたいと思います。

出展 家具の音楽/デスクチェア
森下先生には、普段から様々な面でご助言いただいています。
また、この展覧会企画にともない、
少なからず先生の教えから、影響を受けていることは明白です。
ですので特に私に取っては、今回は実施編としての側面がありますね。
今まで、実際の生活での使用状況を考え、お客さんの指定でない限り、
ウレタンによる張りを主に採用してきましたが、今回は削り出しの椅子。
しかも少々特異な機能を要求されるデスクチェアです。

道具としての良い椅子の必須条件
→ 目的に応じた姿勢、座位保持に必要な機能を満たす事。
使用目的のはっきりとした椅子を選択する事で、
機能、設計の明確化が行えると踏みました。
そうしたポイントを曖昧にすませないためにも、
私に取って今回の削り出し成形は必然でした。
それはデスクチェアの本来の目的と、そのための機能にも合致したものです。
数時間にわたる特定の姿勢でのデスクワーク、
その姿勢による腰と体の負担軽滅に優先にされるべきは、
クッション性、快適性ではなく、急所を押さえた各部形状、
角度構成、面による座位保持との考えです。
(もちろん +座面深さ、高さ)

もちろん目的により、優先順位はあるかと思いますが、
椅子として、最低限そこをないがしろにしては、
他のどんなすばらしい設計、デザインも機能しない部分があります。
ターミネーターでない私たちには、
そういう道具として「機能する椅子」が必要に思われたからです。
それこそが今回の展覧会のタイトル、テーマでもあります。
展覧会の会期中、様々な方々の座り方をじっくり観察できました。
感じた事は、椅子がどうこう以前の、
腰を引いて「座る」ことが出来ない方がとても多いことです。
そうした方は、どの椅子に座られてもそうした姿勢をされる傾向がありました。
どちらかと言うと、「腰掛ける」なのでしょうか?
いや、背面が無ければ、逆にちゃんと腰を引いて座るのかも知れません。
サドルスツールなどは、その良い回答だと思います。
そこで感じたのが、座面アンカーポイントの有用性です。
それが設計上にあるかないかの違いは、数mmの数値以上に大きいかもしれません。
特に板座で、使用時に前傾姿勢にウエイトをおくデスクチェアでは明かです。
とは言うものの、私自身、理論尽くめでそうした訳ではありません。
座ってみて、必然的にその位置に必要と感じたものです。
(レカロ、アーロン等、デスクチェア、エグゼクティブチェアのように、
背と座の連動式傾斜機能を持たない場合、当然でしょう)
これは肩甲骨の動きを妨げない様、背板上部幅を狭めに設計したことにも言えます。
偉そうに聞こえるかも知れませんが、手で考える職人の強みはここだと思います。
それをよりいっそう確固たるものにするのが、学術的理論、データの採用だと。
つまるところ、職人、研究者どちらも人を見るべきなのでしょう。

なんだか固い話になりましたね。
もう少し。
道具を作る側において心すべきは、理論や個性のお仕着せは、
機能もデザインも不快さに繋がるということです。
芸術や仕事ならともかく、毎日の生活のなかでは目障りで、
窮屈な屁理屈でしかありません。
カスタムメイドファニチャーなら、尚更でしょう。
道具としての別注家具の理想は、そうした理論や理屈を感じさせずに、
注文主の要望、目的に対し相応のデザイン、
当たり前の機能を満たす事ではないかと思います。
さて今回のデスクチェア、
来場者、森下先生にも、そこそこの合格点をいただけたようです。
特に座(アンカー部)と背(ランバーサポート部)の当たりと、
可動式アームは、その目的と機能がわかり易く、好評でした。
ではそのショーモデルをどう市販車にフィードバックするか、、。
これがメーカーでも、工房でも、もっとも難しく困難なことだと思います。
私思うのですが、椅子で一番難しいのはダイニングチェアではないでしょうか?
特に日本において、コスト的にも、デザイン的にも、
使用状況的にも、目的の多様性とそのための機能面でも、、。
そうしたすべての要求を満たすものは、不可能にさえ思えます。
(だってそれってナンデモ椅子でしょ、、助けてドラえもん)
フィードバックさせやすいのは、マイチェアとして設計できるイージーチェアでしょうね。
今回の展覧会では、出展者各位が、私のわがままな主旨に賛同いただき、
それぞれのアプローチで、出展いただきました。
会場でのアンケートを読む限り、その主旨は、
ご観覧いただいた皆さんにご理解いただけたようです。
何が出来て、何が力及ばなかったのか?
個々に持ち帰り、仕事に戻るべきでしょう。
注文をさらっとやってのける事が、職人のかっこよさです。
その日まで、せいぜい屁理屈たれて精進いたします。
では皆さまアディオス、ごきげんようバイナラ。

*ファニコネは、定期的に開催するグループ展でも、特定のメンバーでもありません。
それが必要とされれば、必然的に協力を求め、開催する種のものです。
次回は作り手だけでなく、そこからインテリアをキーワードに、
重力の軌道内での企画力のひろがりにも期待しています。
よりコアな企画かもしれませんし、無重力脱力系かもしれません。
乞うご期待。



